年金分割は報酬比例部分の年金(いわゆる厚生年金、共済年金の2階建て部分)を、分割するため離婚した夫婦の婚姻期間中に、国民年金の第1号被保険者期間しかない場合は、そもそも分割をする対象がないので年金分割をすることはできません。

年金分割は、年金を受給中の夫婦や法律婚ではなく、事実婚の期間しかなくてもその期間が、第3号被保険者期間として認められていれば分割を請求することができます。

ただし、年金受給者の年金分割の場合は、すでに受給してしまった年金までもさかのぼって分割するということはできません。

第1号改定者から分割を受けた第2号改定者の、厚生年金の被保険者記録のことを離婚時みなし被保険者期間と呼びますが、この離婚時みなし被保険者期間の取り扱いにも注意が必要です。



老齢の年金を受給


老齢の年金を受給するためには公的年金制度に原則として25年以上加入していなければなりません。25年に1ヶ月でも足りない場合は年金を受給することはできません。

この25年の加入期間は国民年金、厚生年金、共済年金すべて合わせて25年あればよく単独で25年の期間を満たさなければならないというわけではありません。

国民年金の期間には保険料納付済み期間だけではなく保険料免除期間や合算対象期間(いわゆるカラ期間)も含まれます。生年月日や状況によりこの25年という期間は短縮される場合もあります。



離婚年金分割の注意点


そこで注意しなければいけないのは、第1号改定者から分割されて得た第2号改定者の厚生年金の被保険者期間(離婚時みなし被保険者期間)は、あくまでも分割によって得た被保険者期間であって、実際に第2号改定者が自分で加入した被保険者期間ではありません。

年金を受け取る時の年金額の計算の基礎となる期間には算入されますが、受給資格期間の25年を見る場合にこの離婚時みなし被保険者期間は、第2号改定者の納付済み期間には含めないことになっています。

ですから、第2号改定者が自分自身で10年保険料を納めて、第1号改定者から20年分の被保険者期間を分割されたとします。一見自分で納めた10年と分割された20年を合わせれば30年の加入期間になり年金がもらえそうですが、この場合は自分自身で納めた期間が10年しかないため年金はもらえないということになります。

年金の未納期間が多い場合など、せっかく分割を受けても年金がもらえないなんてこともあるのでご自分の年金記録をよく確かめ、25年に足りない場合は60歳過ぎてからも国民年金に任意加入するなりして、なんとか25年の受給資格期間を満たすような努力が必要になります。



離婚年金分割の注意点2


生年月日に応じて60歳から特別支給の老齢厚生年金を受給することができる人がいますが、特別支給の老齢厚生年金を受給するためには、受給資格期間を満たしていてなおかつ、1年以上の厚生年金の被保険者期間がなければいけません。

離婚時みなし被保険者期間は、この特別支給の厚生年金を受給するための1年間の、厚生年金被保険者期間には算入されません。

つまり、第2号改定者自身が加入した1年以上の厚生年金被保険者期間がない限り、分割を受けても特別支給の老齢厚生年金を受給することはできません。



離婚年金分割の注意点3


離婚時みなし被保険者期間は、年金額の計算上報酬比例部分の計算には算入されるが定額部分、経過的加算部分、老齢基礎年金の計算には算入されません。

離婚時みなし被保険者期間は、老齢厚生年金の加給年金の受給要件である、厚生年金被保険者期間240月以上には算入できません。

加給年金は配偶者が65歳になると、配偶者の国民年金に振替加算として加算されますが振替加算が支給されている場合、年金分割を受け離婚時被保険者期間を含め20年以上の厚生年金を受け取ることになった場合振替加算は支給されなくなります。

離婚時みなし被保険者期間と、自分自身の被保険者期間をあわせて44年以上あったとしても、特別支給の老齢厚生年金の、長期加入者の特例には該当しません。

離婚時みなし被保険者期間中に初診日があり、障害等級に該当したとしても自分自身の被保険者期間中ではないので、障害厚生年金は受給できません。

日本国籍を有しない人で、要件(6ヶ月以上の被保険者期間)を満たせば脱退一時金を請求することができるが、離婚時みなし被保険者期間は、この6ヶ月以上の被保険者期間の要件に算入できません。

受給資格期間(原則25年)を、満たした人が死亡した場合の遺族厚生年金の年金計算においては、離婚時みなし被保険者期間は算入されます。

特定被保険者が障害厚生年金を受給している場合は、合意がいらず強制的に年金を分割する3号分割はできません。これは障害者の年金が強制的に、分割され年金額が下がるのは障害年金の趣旨に合わないとの配慮からです。

しかし、障害厚生年金を受給している場合でも合意分割は可能です。








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